サイン・ディスプレイの製作に欠かせないインクジェットメディア。使用用途に応じて適切な材料選定が必要となります。
サイン・ディスプレイの素材は多岐にわたっているため、意外と使用したことのないインクジェットメディアもあるのではないでしょうか。
また、専門業者に任せているという方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は様々なインクジェットメディアの中から、特に広く使用されている「塩ビシート」「FFシート」の特性、種類についてお話します。
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目次
糊付き白塩ビシート
様々なインクジェットメディアの中でも、広く多くの方が使用されるのが糊付きの白塩ビシートです。
■溶剤・Latex用インクジェットメディア 白塩ビシートの一覧
使用頻度の高い、中期・短期用インクジェットメディア
糊付き白塩ビシートの中でも汎用的なのが中期、中長期といったグレードの商品です。サインシティではオリジナルの『TSV-909G』、バンドーエラストマーの『GM-BAG』などが該当します。
屋外、屋内広告を問わず、平面看板を中心に使用されているインクジェットメディアです。
中期用インクジェットメディアのおすすめ
■TSV-909G 1370×50m 中長期用白塩ビ
■グランメッセ 国産 中長期 白塩ビ グロス GM-H-EHG 1370mm×50m
また、イベントや工事看板等で使用される短期用の塩ビシートは、使用されるサイクルが早く、大量に使用されることも多いインクジェットメディアです。
短期間のために安価なものが好まれますが、価格以上に貼りやすさを求められるお客様が多いのも事実です。施工時間が短縮できるなら、金額が少々高くても、結果的にコストダウンに繋がるからです。
貼りやすさはメディアの厚みだけで決まるものではなく、コシであったり、離ケイ紙の厚さ、剥がしやすさも影響します。サインシティでは、『TSV-601MR』が安価で貼りやすさも合わせ持った短期用インクジェットメディアとして人気です。
また、日栄化工の特殊粘着加工である『マトリクス』に代表されるような易施工の機能を有したインクジェットメディアもあり、好んで使用されるお客様もいらっしゃいます。施工時の空気を逃がし易くすることで、貼り作業のストレスを解消することができます。『TSV-601MXR』は易施工かつ安価なインクジェットメディアです。
短期用インクジェットメディアのおすすめ
■短期 白塩ビ マット 再剥離 TSV-602MR 1370mm×50m
■NM-SG 1370×30m 白塩ビ マトリクス
■短期 白塩ビ マット 再剥離 易施工 TSV-602MXR 1370mm×50m
少々高価な長期用インクジェットメディア
価格は少々高くても安心感には代えがたい。
あれこれ使い分ける手間が面倒。
看板全体の金額からすれば、インクジェットメディアが占める割合なんてしれている。
……とお考えの方にお薦めなのが長期用のインクジェットメディアです。
サインシティでは、オリジナルの『TSV-901G』が長期用のインクジェットメディアとして人気が高い商品となります。平面看板に最適であり販売実績も豊富な長期用インクジェットメディアです。
■国産 長期 白塩ビ グロス TSV-901G 1370mm×50m
曲面への追従が必要な場合、ブランド力、品質、安心感が必要な場合は、少々高価ですが3Mのキャスト製法によるプレミアムシリーズをお薦めします。具体的には『IJ180v3-10XR』、『IJ5331Cv3』の2アイテムはラッピングから長期看板までをカバーします。まさにブランド力、品質、安心感の三拍子が揃ったインクジェットメディアです。
■3M コントロールタック IJ180Cv3-10XR 1350×50m
■3M スコッチカル IJ5331Cv3 長期 白 塩ビ グロス 1350×50m
適切なラミネートフィルムの組み合わせ
せっかく状況に応じたインクジェットメディアを選択したにもかかわらず、セットで使用するラミネートフィルムは普段と同じものを使用するというお客様の声もお聞きします。
しかし、この使い方は推奨できません。メーカー側では、適切な組み合わせにて十分な性能が発揮されるように作られており、違う組み合わせでは本来の性能が発揮できないだけではなく、相性、組み合わせの問題でトラブルにつながることも予想されます。
先ほど挙げた商品を例にすると、
- オリジナル長期用メディア『TSV-901G』
+長期用ラミネートフィルム『TLV-101G』 - 3Mのキャスト製法のインクジェットメディア『IJ180v3-10XR』、『IJ5331Cv3』
+キャスト製法のラミネートフィルム『IJ4116N』、『IJ4117N』
を推奨します。表面のフッ素コーティングで汚れの付着を防ぐ機能を有しており、ビジュアルを鮮やかに長期間保護します。
・国産 長期 UV 塩ビラミネート グロス TLV-101G 1380mm×50m
・3M オーバーラミネートフィルム IJ4116N 長期 透明 塩ビ グロス 1350×50m
・3M オーバーラミネートフィルム IJ4117N 長期 透明 塩ビ マット 1350×50m
透過性のある塩ビシート
ここまでは、使用頻度の高いインクジェットメディアとして白塩ビシートを紹介させていただきましたが、次は同じ塩ビシートでも白塩ビシート以外のものを紹介いたします。
電飾用インクジェットメディア
白塩ビシートの大半が、隠蔽性を保つためにグレー糊になっているのに対して、電飾用(バックライト)の看板に使用するインクジェットメディアは、光を透過させるために透明糊となっています。また、表面の塩ビシートも乳白、乳半色、透明となっています。
サインシティではオリジナルの『TSV-951ML』、バンドーエラストマーの『GM-SBL』、3Mの『RG5332R』がお薦めの電飾用乳半メディアとなります。
乳半メディアのおすすめ
■TSV-951ML 1370×30m 電飾用乳半塩ビ
■グランメッセ 国産 中長期 乳白塩ビ セミマット GM-MPT80 1370mm×30m
■3M スコッチカル グラフィックフィルム RG5332R 長期 乳白 塩ビ マット 1270×20m
電飾用としては、乳半メディアを使用される方が多いですが、ベースのアクリル板が乳半アクリルの場合には透明メディアを使用される方もいらっしゃいます。電飾用として使用される透明メディアには、『TSV-957CL』、3Mの『RG5333R』などがあります。
透明メディアのおすすめ
■TSV-957CLR 1370×30m 透明塩ビ 再剥離
■3M スコッチカル グラフィックフィルム RG5333R 長期 透明 塩ビ グロス 1270×20m
ウィンドウ用インクジェットメディア
ウィンドウ用のインクジェットメディアも、電飾用のものと同様に、透明糊である必要があります。一般的な白塩ビシートをウィンドウの外側から貼った場合、室内からグレー糊の部分が見えてしまうためです。また、隠蔽性のあるグレー糊のインクジェットメディアをウィンドウに貼ると光を遮ってしまい、室内が暗くなりすぎてしまう恐れもあります。
そのためサインシティでは、ウィンドウへは透明糊のインクジェットメディアを使用することを推奨します。基本的には電飾用のインクジェットメディアを使用すれば問題はありませんが、透過しすぎるために本来のビジュアルのイメージを表現しづらいとの声もあります。
そこで、お薦めなのが白塩ビシートの透明糊、白糊仕様である『TSV-901CR』、『IJ5331』です。電飾用の乳半メディアよりも透過性が少なく、ハッキリとしたビジュアル表現が可能になります。
■TSV-901CR 1370×30m ウィンドウ用白塩ビ 透明糊
■3M スコッチカル グラフィックフィルム IJ5331 長期 白 塩ビ グロス 1350×50m
ウィンドウ用 透明インクジェットメディア
ウィンドウ用のインクジェットメディアでも、装飾をメインとした表現の場合には透明のインクジェットメディアが必要になります。カッティングシートやフォグラスなどで表現するのが難しい細かな柄や、多色使いの場合には、プリントで表現ができたほうが作業的にも助かります。
そのような時に、白色のインクを搭載しているインクジェットプリンタ、UVプリンタであれば装飾に適したビジュアルの表現が可能となります。(白インクが必要な理由は、色が透けないように白色でとめる必要があるからです。)
ガラス面の全面にフィルムを貼ることになるため、透明度の高いPET素材の透明インクジェットメディアがお薦めで、リンテックサインシステムの超透明PET『GIY-0315』、UVプリンタには超透明PET『GUV-52H5』が高透明のインクジェットメディアとしてお薦めです。
■グラフィカル GIY-0315 1220×30
■グラフィカル GUV-52H5 1560×30 透明UVメディア
■グラフィカル GUV-52H5 1560×30 透明UVメディア
ちなみにPETフィルムは耐候性があまりないため、屋内用のウィンドウ装飾としてのご利用となります。屋外での使用時には、透明度は劣りますが塩ビ素材のインクジェットメディアをご使用ください。
FFシート
最後にインクジェット用のFFシートを紹介します。FFシートは「フレキシブルフェイス」の意味をもつ、アクリル板に代わる電飾用の看板材料です。
FFシートの特徴として、アクリル板よりも軽量であり割れないなどのメリットがあります。なかでも一番のメリットは、アクリル板を使用した大型の看板ではどうしても板の繋ぎ目ができてしまいますが、FFシートであれば繋ぎ目無しの見た目が美しい看板が製作できることです。
インクジェット用のFFシート
FFシートの使用で多いのは、携帯電話SHOPや銀行などのファサード、突き出し看板です。表示面はFFシートの上にマーキングフィルムを貼ることが多いように感じますが、近年はグラデーションのあるロゴやデザインも多いためインクジェット用のFFシートの需要も増加しています。
ロゴ部分にしかグラデーションがない場合、部分的にインクジェット出力したものを貼るという声もありますが推奨はできません。理由は、FFシートからのアウトガスが剥がれの原因となるためです。グラデーションが必要なデザインの際は、一部全部に関わらずインクジェット用のFFシートを使用されることをお薦めします。
サインシティでは、インクジェット用のFFシートとして切売りも可能な『サンフレックス エコ』を販売しております。
■溶剤・Latex用インクジェットメディア インクジェット用FFシート
FFシートは塩ビシートと違い糊面がないため、離ケイ紙もありません。そのため、素材が巻きの状態でくっつきやすい特性があるため、素材の送りの状況は十分に注意して下さい。
まとめ
いかがでしたか?
今回はサインディスプレイで使用されるインクジェットメディアのうち、特に塩ビシートとFFシートの種類・特徴について紹介しました。
糊付き白塩ビシートには、もっとも汎用的な中期・中長期用をはじめ、易施工の機能をもったものや、少々高価ですが高品質の長期用インクジェットメディアなどがあります。
予算や用途のほか、適切なラミネートフィルムとの組み合わせを考慮して使用することが大切です。また、光を透過する透明糊の塩ビシートは、電飾看板やウィンドウ用に適しています。
FFシートは、アクリル板に代わる電飾用のシートで、繋ぎ目無しの見た目が美しい看板が製作できるのがメリットです。
サイン・ディスプレイのメディア素材は多岐にわたりますが、使用用途に応じた、適切な材料を選定していきましょう!